ウシロスガタ 【完】

「冷夏?」


「なに?」


「俺達さ、付き合ってるんだよな?」


「えっ……?」



「俺はお前の彼氏だよな?男だよな?」



冷夏が目を離さず俺を見続けて、俺も冷夏から目を離さなかった。



「………」



旦那がいる冷夏に俺は何を問いただしているのだろう


本当なら普通の恋人同士で納まるのかもしれない。



形が欲しい……

証拠が欲しかった。




冷夏が俺の女であるって事に……。



旦那がいたって関係ない。



俺達は恋愛をしてるのだから……。



暫くの沈黙の後、
今にも消えてしまいそうな小さな声で冷夏が呟き始めた。



「冷夏は、翔クンの彼女だと呼べる?俺の女だって言える?」



「冷夏……」



「俺の女っ!って、みんなに紹介できる?」



「………」




どうしてだろう。



俺は自分から形にこだわったくせに、



すぐに答えてやる事が出来なかった。




俺達はきっと、
この悲しい現実がずっと付き纏うのだろう。




愛が大きくなればなるほど



苦しんで行くのだろう。




傷付きながら必死に繋がりながら……。