ウシロスガタ 【完】

「さとよ……。お前さ、冷夏ちゃんの事ホンキなの?」



「はっ??何言ってんだよ!!だからこんなに頭抱えてんだろうが……」



「ならよ、ちゃんとお前の思い冷夏ちゃんにぶつけろよ、あたるのと、気持ちをぶつけるのは、ちげーからな」



その時……



昨日の光景が頭に浮かんだ。



そして、



冷夏のあの悲しそうな顔が俺の頭から離れなかった。




「俺ってサイテーだよ、何もわかっちゃいねぇ~よ」



「そうそう、何もわかっちゃいね~よ、そもそもな、傷つかない恋愛とか、苦しまない恋愛だなんてねぇ~んだよ!!」



「………」



「本気になればなるほど、思いがでかくなればなるほど、それだけ、悩みが出てくんの!!俺なんかど~するよ?永遠の片思いだぜ?」



そう言いながら、中西は爆笑していた。



コイツだってそんなに強い奴じゃねーのに、



思えば、好きな女の事で愚痴った事なんてなかった。



いつも、俺の顔色を見ながら、俺の気持ちを悟ってくれていた。



なのに俺は……。



どうして、いつも自分だけなんだろう。



本当に自分がどれだけちっちゃい男なのかと、深く思い知らされていた。



「てかよ、そんなに心配ならさ、店にでも顔出せば?」



「はぁ~?」



「冷夏ちゃんの仕事姿を見れば、もしかしたら、また何か変わるかもよ?お前の想像しているもんとは違うかもだろ?」



「あぁ……」



「よし!決まった!!今日は冷夏ちゃん出勤?」



「そうだけど……」



「じゃあ、抜き打ちだな!頑張って稼いで、今日は俺お前に付き合ってやるよ!!」



「マジで?」


「あぁ、その変わり、ちゃんと借りは返して貰うからよ?2人にな」



そう言いながら、中西は俺の肩を叩いた。