ウシロスガタ 【完】

「ホントにこの人の歌っていいよね、共感するよ」



静かな車の中で、冷夏と俺の好きなアーティストのCDが流れていた。



「なっ……すげー分かる」



そう言いながら、冷夏は口ずさんでいた。



「でも、この歌は切ないね……」



「あぁ、半端じゃねーな」



「こんな風になったら、嫌だよ……」



冷夏は歌が流れるコンポを見つめながら、暫く目を閉じていた。




「馬鹿だなぁ~ぜってーなんねぇ~から!!」



そう言いながら、冷夏の頭を撫でた。



「本当?嫌だよ……」



「なんねーよ!!」





その瞬間、冷夏の顔から笑顔が零れた。




この笑顔でいて欲しくて、



俺は出来ること全てをして来ていた。




なのに、俺は自分の辛さだけを冷夏に押しつけて……。



自分から冷夏の笑顔を奪っていたんだ。




「冷夏?好きだよ……」



「うん!!」




全て消えてしまったらいいのに……。



汚い感情を、



全て消すことが出来たなら、



きっと、冷夏とずっと笑い合う事が出来るのだろう。