ウシロスガタ 【完】

「冷夏ごめんな……」



俺の肩の上で冷夏が首を振り続けていた。



「ほんと、ｼｮﾎﾞｲ男だな」



冷夏の気持ちなんて、考えてるつもりで、全然考えてあげてなんかない。



自分だけが辛そうにして、



自分だけが苦しいってなげき……




その気持ちを全てぶつけられている冷夏の気持ちなんて何も分かってやれなかった。



「冷夏、翔ｸﾝが好きだよ？ﾎﾝﾄだよ……？」



今にも消えてしまいそうな声を漏らした冷夏をただ、強く抱きしめる事しか出来なかった。




「もっと早く出逢いたかった……」



そう、俺の胸の中で呟いた冷夏の顔を見る事が怖くて……。




俺の目からは涙だけが零れ落ちた。





なんで今頃になって冷夏と出逢ってしまったのか……。



こんなにも近くにいたのに




なんで今さら、冷夏と俺を神様は出逢わせてしまったのだろう。




俺も冷夏も、もう気づき始めていた。



お互いが贅沢になって行く事を……。




それが、男と女であり、



人間だという事を……。