ウシロスガタ 【完】

「冷夏、携帯鳴ってるよ」


ダッシュボードに置いた冷夏の携帯が光と共に小刻みに
震えていた。



「メールだから大丈夫!」



「てか見ろよ?」



「あ、うん……」



そう言いながら携帯に手を伸ばし、メールを確認してすぐに閉じた。



冷夏の携帯――



俺の知らない世界が沢山
詰まっている。



全てを知りたいと思う俺は


冷夏が毎回、俺といる時にメールの返信をしない事を
不思議に思っていた。



「ごめんね!」



そう笑顔を見せる冷夏に
俺は我慢出来ずに気持ちをぶつけていた。




「……えっ?」


「だから…男だろ?メール」


「違うよ?」


「いいよ、別に嘘なんかつかなくて……」


「本当に違うよ?見て?」



冷夏が携帯を差し出した手を俺は咄嗟に払った。



「あっ、ごめん……」


小さな、小さな俺のプライド


本当は凄く気になって、
しょうがないくせに……



気が付いたら冷夏の手を払い退けていた。



「ううん……」



そう笑いながら言った冷夏の顔は、


悲しいほどに引き攣っていた。