ウシロスガタ 【完】

「あっ!!そうだ♪」


「どした?」


「冷夏さ、翔クンのライターぱくってたよぉ~店で気づいた」


「なんだ、ライターなんていらねって!!」


「じゃぁ、も~らった!!」



そう言うと、たかがライターで冷夏は嬉しそうにバッグにしまった。



「じゃぁ、俺も、も~らった!!」


「えっ?なにを?」


「ほれ……」



俺は冷夏が落して行ったピアスを前に差し出した。



「あーっ!!なんで?」


「落し物~!!」


「探してたよ」


「ちょっと借りてた」


「ありがと★」


「いや、返さないよ!!」


「だって、ピアスなんて……」


「だよな……」



それでも、なんだか返すのにためらっていた。



冷夏の物が俺の傍にあるってだけで、なんだか心が違うんだ……。



「今度、冷夏がおまもり作ってくる♪」


「おまもり?」


「そう♪おまもり!!」



そう言うとまた、楽しそうに笑った。



冷夏が笑うと
俺もつられて顔が綻ぶ……

冷夏が不安そうな顔をしてると、俺の顔も曇る……。




「なぁ、冷夏?」



「んっ?」



「俺の事、好き?」



「うん!!」



「言葉にしてくれなきゃ、わかんねぇ~!」



恥ずかしそうに俯く冷夏をこれほどに、


“さらってしまいたい”



そう思った事なんてなかった。



「大好き……」




俺は予想もしなかった。



本気で愛した女が
俺の横で笑っている事を。



俺に『大好き』そう言ってくれる事を。




「俺もだよ」




こんなにも幸せな時間を
過ごせる事を。