照れくさそうに、俺の胸の中にいる冷夏が俺の顔を見上げた。
冷夏が俺にしっかりしがみ付いてる姿を見て、どうしようもないくらいに鼓動が高鳴っていた。
「お前、ホントにちっちぇ~な」
「翔クンが大きいの!!」
そう言いながら、俺達は深く抱きしめ合った。
「翔クンの心臓の音が聞こえる……」
きっと俺の心臓なんてバカみたいに早く鼓動を刻んでいるだろう。
「バカ!!恥ずかしいから聞くなよ!!」
自分でも分かる心臓のドクンドクンという速さに恥ずかしくなっていた。
「冷夏……?」
「……」
俺の話しに言葉を返さず、ただ必死にしがみついてる冷夏を見て、心が痛くなった。
何を考えてる?
何かあったのか?
冷夏の不安そうな顔を見ながら、俺も不安になり、何も言わず、離さずにいた。
「翔クン、心臓の音はや~い!!」
「はっ?お前うぜー!!」
「ドキドキしてるんだもん」
「うるせ~な!!するだろ!!」
そう言いながらも、さっきの冷夏の不安そうな顔が俺には引っかかっていた。
冷夏?
俺が何も知らないと思う?
俺は、いつだってお前の顔つき、顔色、全てを見ているんだよ?
他の奴には、そんな冷夏の姿を悟ること、出来なかったかもしれないけど、
俺にはわかっちゃうんだよ。
冷夏の全てを知りたい
それが、贅沢だとしても。
愛する人の全てを知りたい……。