それからの俺達は、
1日1回どこかで必ず顔を見ていた。


冷夏が昼間、
どこかに出掛けるもんなら俺も同じ時間に家を出た。



冷夏がパチ屋の前を通るなら、俺はパチ屋からでて、前で冷夏の車が通るのを確認した。



冷夏が出勤なら、
どこに居ても、その時間になると帰ってきて、すこしだけ逢って見送った。



そして、店が終わるまで、外で時間を潰してた。



少しでも
冷夏に逢えるだけで、



俺の不安はどこかに飛んで行った。




冷夏の香水の匂いが、俺を落ち着かせてくれたんだ。



その日もいつもの通り、冷夏が出勤前にいつもの場所で待ち合わせしていた。



2人の秘密の隠れ場所。



2人だけの秘密の場所で、夢みたいなひと時を送れることだけで、




俺は満足だった。




違うな……。




“満足だ”そう言い聞かせていたんだろうな。




本当は、もっともっと贅沢な事を求めたいくせに、




それでも、冷夏と一緒に居れるわずかな時間だけでも“満足”そう言い聞かせていたんだろうな。





冷夏がいつもの場所に自分の車を停めて、
俺の車に乗り込んでくる。



そこからきっと、俺達は
夢の中に入り込んでいたんだろう……。