ウシロスガタ 【完】

冷夏を好きになって、冷夏の気持ちが俺のとこにある事を知って



それだけで、幸せなはずなのに。



嫉妬や、心配……



そんな感情が一気に溢れ出し、冷夏とバイバイしてから俺の心の中はいっきに空っぽになっていた。



「つーかよ、そんなんじゃ続かないわな」



中西の言葉に胸を痛め、携帯を閉じた。



「お前にわかんねーって」


「お前な、お前と冷夏チャンは店で知り合ってんだぜ?しょうがねぇーだろ!!仕事なんだよ」



“しごと”


それで、全てを理解出来るほど、俺は出来た奴じゃねぇ……



そう言いながら、飲めないビールを注文した。



冷夏が終わるまで、あと2時間……


早く終わってくれ。



そう何度も携帯で時間と睨めっこしながら、酔って愚痴ばかり零してる中西の相手をしていた。



「でもよ……俺はどんな形であれ、お前と冷夏チャンが出会えた事には意味があるって思ってるからよ」



こんな酔いつぶれて酒に呑まれてる男の言葉を誰が聞くだろう……。



そんな、風に思うかもしれないが、



やっぱり、どんな時でも、中西の言葉1つ1つは意味が深かった。



「好きなんだから、しょうがねぇだろ?冷夏チャンがお前を好きになってくれただけ感謝しろよ」



一生懸命、話してる中西をじっと見つめてた。



「初心の気持ち、忘れんな!!」



「そんなん、分かってっから!!」



そう言いながら、焼酎と水をすり替えながら、中西の前にそっと置いた。