ウシロスガタ 【完】

「よし、行って来い!!」


「うん!!」


冷夏が俺から離れた瞬間に急に切なくなっていた。



これから冷夏は、



俺ではない男の相手をしに行く。



笑顔で送り出せるわけなんてなかった。




「バイバイ!!翔クン!!」



そう微笑む冷夏に俺は一生懸命に笑顔を作った。




「行くんじゃ、ねぇーよ」



車に乗り込む冷夏を見ながら、俺はそう呟いていた。




冷夏を見送る事が辛くて、俺もすぐに自分の車に乗り込み、冷夏の後についた。



自然と、助手席に目が行った。



さっきまで、確かにここに冷夏が座っていた。


そう、何分か前まで。



そう思うと切なくて、悲しかった。





でも、わずかに残る冷夏の香水の匂いが、俺を少しだけ安心させてくれたんだ。






この俺の全ての思いを……



どうやって言葉にすれば、冷夏に届くのだろう。









俺の思いを伝える言葉は、きっとないのだろう。