ウシロスガタ 【完】

「人を好きになるって事、ずっと忘れていたの……」

悲しい悲しい言葉。


その冷夏の言葉に俺は口を閉ざした



「好きの意味も愛の意味も忘れてしまったの……」


「冷夏……」


「好きになるって胸が苦しくなる?その人の事考えると辛くて、苦しく……」

「もういい!!もういいよ冷夏……」



「だから今の気持ち大切にしたいの……」



「ばか……ばかだな、お前って奴は」



その時の冷夏の笑顔は
今までに見た事のない最高の笑顔だった。



「ばかだよ~だ」



俺は感じていたんだ。



冷夏と出会った時から、



深い傷を背負っている事に


気がついてしまっていたんだ。




「そろそろ行かなきゃ」


「勝手に行けよ!」


「行くよ!!」


「行っちゃうんだ……」



もう強がる必要なんてない


冷夏になら俺の弱さも全部


見せられる気がするから……。