ウシロスガタ 【完】

外は夜だってゆーのに蒸し暑くて……


暑がりな俺はいつも通り、部屋同様、クーラーを全開にしていた。


いつもなら、寒さなんて感じたりしないのに、


何故だか、車の中も……

俺達の間も……



とても、寒さを感じた。



「だから言ったでしょ?」


「何が?」


そんな冷たい空気の中で、冷夏が突然話し始めた。



「好きでも、どうにもならないこともあるって……」



「違う、違うよ冷夏……。それは状況だよ、結婚してたりしたら、あるかもしれないけど、でも結婚してたって、気持ちがあれば、どうにかなったりもする。絶対なんて言えないけど、でも本物なら……」



「本物なら……?」



「どうにもならない事なんてない」



冷夏が俺を見る姿が



凄く愛おしくて……



離れたくない……



そうずっと、願い続けていた。




『初めから、叶わない恋なのよ』


『割り切ってね』



昔の心の傷が痛みだす。



目の前にいるのは冷夏なのに、



あの時、あの女が放った言葉が、冷夏の傍にまとわりつく……



「くっそっ!!!」



「どしたの?」



離したくない……



ここで終わりになんかしたくない。


冷夏の傍にいたい……




叶わなくたっていい、


それでも冷夏の傍にいられるのなら……。





俺は、目の前にいる冷夏にほほ笑んだ。