――バタン!!!!――


洗車場に着いた瞬間、
不機嫌そうに中西が車から降りて俺の元に歩いてきた



「なんで、こんな夜中に
洗車だよ!!」



「スッキリさせたくて……」



俺の言葉に中西はため息をついた



「情けねぇー男だったか」


「はっ!?」



「簡単に諦めるとは思わなかったよ」



「ハハハハハッ♪そーか」



「だから、情けねぇ~男は嫌いだよ」



――バシッ!!!――



「いってぇーな!なんなんだよ!!」




「諦めねぇ~よ!」



「はっ?だって今、スッキリしたいって……」



「だから……逆っ!!
俺、無理だわ……冷夏が
好きすぎだから」




不思議そうな顔をしながら俺を見る中西の顔に笑いながらも、



中西が一緒にいてくれた事に感謝していた。



「わけ、わかんねぇー奴だな……」




そう言いながらも、中西は笑顔だった。





「しかしよ、なんでこんな夜中に洗車なの?」


「あした、冷夏と会って話すんだ……だから」


「だから、洗車?」


「そう、だから洗車」


「意味わかんねぇーけど、自慢の車だもんな!!」


「そう、そう…」



そう言いながら、中西も俺の隣で洗車を始めた。



俺は冷夏とメールが途切れないように、返信しながら車を洗っていた。



夏の夜の心地よい風を浴びながら



俺もどこかで、心が落ち着いていた。



不安がなくなったなんて言ったら嘘になるけど……。



それでも消す事のできない冷夏への思いを、またしっかり心におさめた。



冷夏を失うくらいなら



俺は苦しくても、冷夏の傍にいたい。



冷夏への気持ちを断ち切る事なんて不可能だから……




「さと……?」



「あ?」



「頑張れよ!!」



「ああ……」



「不器用なんだからよ!!」


「うっせーよ」



そう言いながら、俺は確かに笑っていた。