ウシロスガタ 【完】

車の中で、冷夏の着信音と同じ音楽が鳴りはじめ、



俺はコンポの電源を切った。



ーー♪~♪♪~♪ーー


《正直、考えた事なんてなかった。ただ…素直に翔クンとのメールが楽しくて、幸せだった》


“幸せだった……”


俺の気持ちと冷夏の気持ちが重なっていたこと……。



そう思うと、やりきれなくなり…


どうしようもなかった。



それでも、許せなかった。




どこかで、冷夏を許せない自分がいた。




《子供は何人いるの?》


《1人》


《じゃぁ、今までの全部うそ?》


《何に対して?》


《毎日のメールのやり取り》


《行動とかは、嘘ついた、でも気持ちは嘘じゃなかった……》


《じゃぁ、昼間の仕事なんて嘘なんだね》


《ごめんなさい》


そんな冷夏の痛みも十分伝わってきているのに、



なのに、どこかで今までの幸せな日々が一瞬で壊された事に、苦しみもがいていて……



冷夏を思いやる事なんて出来なかった



《何が嘘で、何が本当かわからないや!!》


《本当にごめんなさい…、嫌われちゃったね。忘れていいから……。》




その冷夏のメールを見て、俺の手が止まった。