「もしもしトウヤ? アヤメ、明日にでも退院できるって。
私、夜勤だからそのまま手続きして、連れて帰るわ。」

「本当?良かった。後で病院よるつもりだけど…
明日は俺バイト2時にはあがれると思うから、帰りにおばさんちに向かえに行くよ。」

「わかった。よろしくね。アヤメも家に帰れるの楽しみにしてるよ。」

「うん。」

 アヤメは 、1週間前から入院していた。
あまり体調がよくなさそうなので、バイトが休みの日、念のため病院に連れていくと
しばらく入院した方がいいとゆうことになった。
アヤメはなかなか苦しいとか出さないので、たびたびこんな事になってしまう。
もっと気をつけて早めに連れていかないと…
いつもそう思うのだけど。

アイツは相変わらず夜中にしか帰ってこないし、俺達の事なんか心配もしちゃいない。
アヤメの体調を気づかうどころか、入院したって見舞いにもこない。
希美おばさんが何度も電話して見舞いにくるよう説教したって知らん顔。
いったいどうゆう神経してんだか?
本当に親なのかって感じ…
あんなやつより希美おばさんのほうがよっぽど親みたいだよ。

トウヤは夕方バイトの前に病院に行った。
部屋に入るとアヤメはお絵かきに夢中になっていた。
「アヤメ、あしたはお家に帰れるよ」
「あっ。お兄ちゃん。本当にかえれるの? やったあ。」
「よかったなあ。アヤメがいい子にしてたから先生が帰っていいってよ。」
「昨日ね、さくらちゃんと、お家に帰ったらクッキー作ろうねって約束したんだよ♪」
「そっかあ。よかったな。」
「あのね。こんどの土曜日みさきちゃんのお誕生日なの。だからクッキーあげようと思ってたんだ。
でもね、病院にお泊まりになっちゃったでしょ?だからあげられないかなって思ってたの。」
「そっかあ。みさきちゃんて保育園でいちばんの仲良しだったよな。きっと、よろこぶぞ。
お兄ちゃんにも、味見させてくれよ。」
「ふふふ。どうしよっかなあ。」
アヤメは、嬉しそうだ。ここにいれば友だちもいるし、さみしくないのかな?とも思うもけど
やっぱり、家に帰りたいんだな。