「アイのことだろ〜?
廉は優しすぎるんだよ。あんなのほっとくのが一番だって。」



海斗も気付いているのか。




「え、どういうこと?」



「あの女は、俺らに興味がなかった。」


首を傾げる奏に、俺は答えた。



あの教室の中で、俺たちに向けられた尊敬と恐怖と、欲望の眼差し。



その中で、1人だけどうでも良さそうな瞳で俺らを見ていた。




それに、あの女の雰囲気……


淡く儚く、どこかに消えそうだった。




あんなにも綺麗な顔で、あんなにも儚い雰囲気は、俺の目を惹きつけるには十分だった。





「噂をすれば…」



昴が前を見つめて、呟いた。