本名じゃなくてもいいよね? もちろん、見知らぬ人に教えたくないっていうのもあるけど。 私は、自分の名前が嫌いだから……。 『美しい愛』 そんなの、あるわけがない。 私に相応しくない名前。 私は、ただの愛すら知らないというのに。 「………アイよ。」 「アイか。いい名前だな。俺の名前はアツシだ。」 男に腕を組まされ、私はいつも通りに歩き出す。 多くの光が交差する街。 明るい街なのに……どうして私の目にはこんなにも虚しく映るんだろう。 「あそこでいいか?」 「どこでもいい。」