「あの男が残していった、唯一のお金を警察の方から預かったの。」 “あの男” それは、可哀想な、私の実の父のことに違いない。 同情はしても、あなたのせいで私の人生はここまで落ちたことを憎まずにはいられない。 でも……… このお金だけは、汚いお金なんかじゃないんだ。 大切にしよう。 「まるで、形見のようね………」 私はそれをカバンにしまうと、 今度こそ本当に、施設をあとにした。 高校入学前の、春の出来事。 私は、変わるための一歩を踏み出した。