「美愛……弱音吐いていい?」



「いいよ…」




さっきまでの喧嘩とは打って変わって、今の悠には強さの欠片も見えない。





「帰りたい……」




きっと、今の悠が言った “帰りたい場所” は、今の家じゃない。



私たちが出会い、共に笑い、過ごした場所。



時間はもう二度と戻れないけど、


まだ、帰りたい場所はある。




でも、私たちはそこには帰れない。



私たちは、そこで、多くの大切なものを捨ててきたから。




「私もね……帰れるなら帰りたい。」



それでも……どんなに願っても、私たちは帰れない。



私たちは、その場所で大切な人を、裏切ったのだから。




「ダメだけど、もう一度、あの場所の土の上に立ちたい。」