先程アイと名乗ったが、あれはもちろん本名ではない。 使い勝手のいい、偽名。 私の商売の時の名前だ。 本名は、雨宮 美愛 (あまみや みあ)。 そして目の前の彼は、鳥遊 悠希 (たかなし はるき)。 私は省略して悠と呼んでいる。 「入れよ。」 「お邪魔します。」 見慣れた部屋へと入る。 「悠希が寝かせてくれたの?」 「まあな。」 悠希について行けば、いつもの定位置に幼い子どもが寝ている。 まだ生まれて6ヶ月。 立つことはおろかハイハイも出来ない。 この前やっと寝返りしたばかりだ。