「もうちょっとアピールやらなんやらすればいいじゃない」

「しとるわ!!うざいぐらいしとるわ!!毎回華麗に追い払われますもう何度匿名でどこかのラジオに相談しようかと思ったことか!!」

「意味わからないから落ち着いて」

「そ、そうだね...ひっひっふー」

「妊婦か」

くだらない会話を芽依と交わしていると、突如なにか思い付いた様に芽依がバッグを漁る。

「どうしたの?」

「はい」

「...?」

芽依が私に差し出したのは、映画のチケット。

「カップル席あげる、貰ったんだけと使わないの私」

「そっか...独り身だしね」

「ごめん殴っていい?」

'カップル'という単語に異様な恥ずかしさを覚え冗談を言えば芽依から殺気オーラを感じる。

「ごめんなさいありがとうございます」

「よろしい」

深々と頭を下げれば芽依が「ほら如月君の所行ってきな」と背中を押す。

何だかんだすっごい良い人だなあ芽依...

地味に感謝しつつも私は如月君の所へと駆けた。