「いい加減、諦めろ、龍」

「…雷」

どこからか、雷君が現れ、龍に言った。


「杏ちゃんを、どれだけ困らせれば気が済むんだよ?

杏ちゃんの苦しみは、お前になんかわからねえ・・・

父親の敷いたレールの上しか走れないお前に、

杏ちゃんを幸せにすることなんか絶対できない」

「・・・」

…雷君が何を言っているのか、背後に雷君がいるため分からない。


…龍の手が、ゆっくりと離れた。



「…杏、オレは、何があっても、

杏だけを好きでいる・・・大人になっても、恋なんてしない。

結婚なんてもっての外だ。

オレは、お前を愛してる」

そう言った龍は、学校の中に入っていった。


…時が止まったような錯覚に囚われた。

高校生が愛だなんてそんな事、ばかげてる。

大人たちはそう言って笑うかもしれない。

でも私は、龍と同じ気持ちだった。


私も龍を愛してる。

もう、二度と、恋なんてしない。

そう思った・・・

何で同じ気持ちなんだろう・・・

何で私たちの想いは、常に寄り添っているんだろう・・・