だって吾妻くん、わからないじゃない。
私がどれだけ熱心に語っても、花火を見ていない吾妻くんにはあの感動は伝わらない。
同じ景色を、感情を、共有できない。
こんなに近いのに、
こんなに、遠い。
「……ごめん、なんでもない」
ポトリとグラスに氷を落とし、口をつけながら、私は黙ってベッドの上に腰を下ろしました。
小中学生までは結構怖いもの知らずで、吾妻くんに言いたい放題言っていたような気がするけれど。
付き合い始めてからは、私も少し冷静な女になったみたいで。
余計なこと言って、喧嘩したくない。
……なんて柄じゃなかったのに、そんなことをふと考えるようになって。


