「優音」


「ん?」


「静かでいい。何か音かけて」


「うん」


テーブルの上にあったCDプレイヤーのリモコンを手に取り、本体の電源を入れ音楽を流す。


「これでいい?」


「ああ」


仁のお母さんのピアノの音が、静かに流れる。


最近はこうして、仁のお母さんの音を聞くことが多くなった。


仁は勉強のひとつだって言うけど、もう仁の中で、ご両親との関係は解消されたのかなって思う。


ピアノの音を聞きながら、私は雑誌を読んで、仁は煙草を吸う。


違うことをしてるけど、同じ空間にいるだけですごく幸せ。


パラパラと雑誌をめくる。


「ふーん。こんな記事書いてるんだ」


雑誌の最後のページらへんに、「キスはどれくらいしますか?」という記事が載っていて、思わず見てしまう。