家業の事があって樹里にはお見合いをさせるつもりなのだ。
純とは学生時代のボランティア活動で出会い、フィーリングが合って付き合いだしてかれこれ5年近くになる。

樹里の親がお見合いの話をしていることは純に話してはいる。しかし、純の性格上、深刻には捉えていないようだ。
どうしてあんなに呑気でいられるのだろうと思うものの、性格だからと諦めるのが常なのだ…
でも樹里はそんなあっけらかんとして大らかな純が好きなのだ。
老舗料理屋の愛娘として厳格に育てられた樹里にとっては自由奔放に生きるのが信条の純がこの上なく魅力的なのだ。

小一時間ばかしうたた寝をしただろうか…
純はどうしたのだろうか?
帰るまえにもう一度電話をかけてみるが繋がらない。
もう帰ろう。
マスターの心配をよそに重い足取りでウエスを出た…


タクシーでマンションに帰って直ぐにシャワーを浴びた。
今日と言う日が終わろうとしている…
樹里の心の中は不安と不信感と苛立ちが交錯するままベッドに横になった。
明日は大学時代の同級生、香織とランチを約束している。
樹里の一番の親友だ。

香織は一昨年に結婚して幸せな家庭を築いていて来年の春にはママになるのだ。
その前にゆっくり会おうと香織が誘ってくれたのだ。
同級生の中でも能天気で明るさは天下一品。おまけに天然ときていていつも元気をくれる大好きな奴なのだ。
香織に会える楽しみを胸に寝てしまおう。
朝には純も連絡をくれるだろう…
いっも寝る時のおまじない、シャンバラを呟きながら眠りについた。