1863年

文久3年、10月。

10月も後半に入ったというのに、まだ暑さが残る。
じめじめとした空気を颯爽と歩く、1人の少女。

「花鈴ちゃんやわぁ。元気にしとったんかい?」
「京の暑さには慣れたようやね。」
町の人々は花鈴という少女になんのためらいもなく、声を掛ける。
「久しぶりです。元気ですよ」
ニコリと笑う彼女はいかにも町娘という格好はしておらず、長い髪を腰までおろし女では滅多に提げない刀をふた振り提げている。

「みなさんも元気で何よりです」
またまた笑う彼女の周りにはもう人集りができていた。