「姫宮を知っていた?…本当に彼は鬼一族なの?」

だったら何故、こんなにも記憶がないのだろう。
毎年、行われている会にはきちんと出ていた。
だいたい今の鬼一族の数も把握している。

でも、彼を見たことはない。

「……」

なにも思い当たることがなく、花鈴は肩にのっているルリに尋ねた。

「瑠璃、今のは誰?」


キュ?

やっぱり瑠璃は軽く首を傾げて花鈴の周りをくるくる飛ぶ。
花鈴ははぁと息つくと軽く意識をなくしそうな沖田を見る。
まさか沖田がここまでやられるとは思わなかった。

「近藤さん!いる!?」

声を張ると、誰かが勢いよく階段を駆け上る音がした。

「っ!総司!!!」

近藤ではなく、土方のようだ。
しかも、男が去ってから怒号はすでに止んでいる。

「花鈴、てめぇは怪我ねぇか?」
「私は大丈夫。ほとんど返り血だし。総司君をすぐにしたに運んで。手当する。」

土方はここで何があったのか説明してほしいような表情だったが、そんな余裕は今持ち合わせてない。