ズキズキと痛む。

花鈴はすうっと息を吸い、目を閉じる。



そう、自分は人間なんかじゃないの。
私は…誰からにも恐ろしく、罪人に等しい………


「鬼なのだからね。」


心の奥底では誰が死のうが関係ない。
ただ己の仕事をまっとうせよ、と何処からか声がする。

ううん。
わたしは。
誰にも死んで欲しくない。

だから鬼の里を離れ、人間と暮らしてるのだから。

「さぁ、わたしはわたしらしく。」

どこからか笑いがこみあげてくる。

口元がすこし緩む。

まだ私は…やるべきことがあるのだから。
「瑠璃、いる?」

ピィッー!

「悪いけど、池田屋と四国屋をみてきて。」

花鈴の一言で瑠璃という鳥は勢いよく飛び立つ。
花鈴も戸を開けると広間に向かう。



世にゆう、池田屋事件の始まり。