「そんなことって…私にとっては一大事!」
無駄に声を張り上げて反論するも、放課後の教室に反響するだけで、それが余計に私の中の虚しさを煽った。
「第一杏奈の理想は高すぎるのよ」
「高いってどこがさ」
「全部よ、全部」
即答で返ってきた返事に思わず言葉に詰まる。
そんなことない!と自信を持って言えない自分が虚しすぎる。
「誰だって理想は高いじゃん」
自分でも驚くほどの声の小ささに余計に悲しくなった。
いやでも別に『かっこ良くて優しくて話があって高身長でスマートな紳士で大切にしてくれて少しヤキモチ焼きで面白くて一緒にいて気兼ねなくて楽しい人』なんて誰しもがみる夢じゃんか。
だがあえてそのことを口にしない私は大人だ、と自分に言い聞かせて机に顔を伏せる。
