桜並木を過ぎると、校門のところにあの子が立っていた。
「あー!
澪ちゃん遅いよ!!」
「ごめんごめん
桜綺麗に咲いてるなーと思ってさ」
「あぁ確かに!
春のにおいがするよね!!」
「…………ふふっ」
「え?なに笑ってんの??」
「………いや……ふふっ……」
「えー!なになにー?!」
わけがわからず首をかしげる私の親友に、思わず笑みがこぼれる。
「真緒ならそう言うと思って」
「なぁにそれー」
頬を膨らませ、子供っぽい表情でこちらを見上げる真緒
有栖川真緒(ありすがわまお)は私の中学の時からの大親友。
いつも笑顔でふわふわして女の子らしくて、でも少し天然で。
いわゆる愛されキャラだ。
小動物のように小柄で顔が小さくて、大きな瞳が可愛らしい。
その上名前まで可愛くて、少し嫉妬してしまうくらいだ。
それに対して私
須藤澪(すどうれい)は
痩せ型で背が高くて、真っ黒なショートの髪からのぞく目は、父親に似てキツい。
こんな容姿のおかげで性格もキツいと思われがちで、中学で真緒に出会うまで積極的に話しかけてくれる友達もおらず、その影響でまわりの同級生に比べてコミュニケーションをとるのが苦手だ。
髪型を変えてみようと1度伸ばしてみたりもしたけど、余計に暗く見えるだけだった。
目つきが悪いのは生まれつきだし
それは私自身どうしようもない。
結局私はなすすべもなく
自分の容姿や性格を恨んだ。
こんな私に、真緒という友達ができたのは中学2年の時のことだった。