あいつに彼女ができました。





「これから…どうしよう。」





お金もないんじゃなにも買えないし。
スマホがなかったら連絡も出来ない。


気がつけば日はすっかり暮れていて公園の時計を見るともう七時だった。


着いたのが四時くらいだから、もう三時間もここに!?
みんなが心配しちゃう。





「よっこらせっと。」






取りあえずどこでもいいから駅に行こう。
駅員さんに状況を…あれ?交番がいいのかな?
でも、交番の場所知らな「あの。どうしたんですか??」






「えっ?あー!あなたは!!」






振り向いた先には私たちのあこがれの七瀬晴さまがいた。







「ん??えっと、あぁ!ダントツで可愛いって噂の、さ、さ、桜!ちゃん??」






可愛い?
そんな冗談、今笑えない…
私の名前なんで知ってるのかな?
私なんか悪いことしたっけ!?





「私は、可愛くないですし、可愛いとしたら捺だと思います!ていうか、晴さまの方が可愛いですし。」





晴さまに勝てる人はこの学校にいない。という噂はずっと前から知っていた。
それも、そのはず。
だってこんなに美人なんだから。
優しそうで可憐で優雅。
そこらのモデルよりもずっと綺麗。

家も、大財閥の生き残りだとか、石油王を父に持つとか、天皇の隠し子だとか。
根も葉もない噂がたえない方だった。





「なっちゃん!可愛いね~!でも、桜ちゃんも可愛いよ!私がね、可愛かったら桜ちゃんは神様だよ。てか、晴さまってやめてよ!晴でいいから!晴で。」






捺と知り合いの晴…さま。
こういう謙虚なところが人気なんだよね。
わかるわ~





「あっと、じゃあ晴ちゃんで。私も呼び捨てでいいですよ。」







「はーい。じゃあ、敬語やめてね!桜!あと、どうしたの?家に帰らないの?」





もっと、ひ弱な人だと思っていたから、その親しみやすさにビックリした。





「お金もスマホも置いて来ちゃって。私、失恋したんです。大好きだったんだよね、その人のこと。今日、キスしてるとこ見ちゃって。なーんか、いつかこっち見てくれるかもっておもってた自分が恥ずかしかった。なんだ、二人は相思相愛なんじゃんって思ったら逃げ出したくなって。でも、この公園に来たとき男の子が声かけてくれたんだよね、大丈夫?って。すっごく嬉しかった。優しい子でね、お姉ちゃんたちに心配かけなくないってそればっかりで。だからこんなに小さな子が頑張ってるんだって思ったら私も負けてられないって。だけど、辛くて苦しくて。もう、本当に自分が嫌なの。」





息をつく間もなく一気に話した私は涙が出そうになるのを、必死でたえていた。