ばぁは明るく言って箸を拾いあげたが、


握力が落ちてきている…。
私はそう思った。


「ばぁ。
美味しい?」

集中して食べているばぁが、
なんだかとっても愛しかった。


「美味しいよ。
亜優はもぉ、じきに嫁っこさ行けるなぁ。」

「ばぁ、
結婚は相手がいないとできないんだよ。」

そう言うと、
ばぁは食べている手を止めて私の方へ向き直って言った。


「亜優は大丈夫だ。
焦らなくても、すぐに嫁さ行ける。

亜優…。
幸せになってけろな。
ばぁちゃん、それだけだ…。」

ばぁの目は真剣だった。
私は涙ぐみそうになるのを我慢して、ただ頷いた。


その頃から私は、バイトから帰ってきてもばぁの物音ひとつで起きてしまう生活を送っていた。