季節は徐々に新緑から梅雨を経て、
夏に移っていった…。


変わったことと言えば、ばぁが起きてる時間が短くなったことだった…。


あのちょっとした事件をきっかけに、
ばぁの体調は落ち込んでいった…。


夜になると伯父さんや伯母さんが来てくれるから、
夜は頑張って起きていたけど、
その代わりに昼間は居間のソファで、うとうとしていることが多くなった…。


多分、身体がせつなくてあまり動きたくなかったんだと思う…。


家族に心配を掛けたくないと、
一生懸命にばぁは、元気に振る舞っていた…。

…。
「ばぁ。
お昼ご飯できたよ。」

ソファで寝ているばぁにそっと声を掛けると、
ばぁはゆっくりゆっくり身体を起こした。

「そぉけ。
ありがとな。」


「ばぁ。
今日はばぁの好きな、うどんだよ。」

ばぁの目の前に、うどんの器を置きながら、
私も座った。


「んじゃ、ごちそうになるかな。」

そう言ってばぁは食べ始めた。

…。
食べ始めて数分後、

カタンっ。

テーブルに乾いた音が響いた…。

ばぁが使っている箸が、テーブルに落ちたのだ。

「あんら。
箸が逃げちまったわ。」