「じゃあ、えりりん。
ごちそうさまでした。」


「こちらこそどうもね。
今度はひとりで来なさい。
うるさいのは連れて来なくていいから。」


えりりんと泰治さんに手を振って、私はタクシーに乗り込んだ。


…。

「亜優。
帰りにちょっと亜優の部屋に寄ってもいいか?
すぐ帰るから。」

タクシーが家に着く少し前、大和くんが言った。

「…うん。
大丈夫だよ。
でも少し散らかってるよ?」

「構わないよ。
すぐに帰るから。
ちょっとだけ寄らして。」


大和くんがこんなことを言うのは珍しかった。
またさっきの続きで怒られるのかもしれないとかいろいろ思ったけど、

断る理由は何もなかった…。

寝静まった家で物音を立てないように、こっそりと私たちは2階へ上がった。



「何か持って来ようか?」

私は沈黙に耐え兼ねて、
そう切り出した。

「いや。
何もいらない。
…。
なぁ、亜優。
ちょっとだけ肩貸してくれないか?」

「…。」
私は返事の変わりに小さく頷く。

すると、大和くんが私の隣りに座り直し、
もたれかかってきた…。