梅林賀琉

そして、大きく頷いた。



……だが、そんなことをしても変わらないのはわかっていた。



それからもう一度窓を見た時に気づいた。外はきっと大海原が広がっているに違いない。それなのに、海水が自分の部屋まで浸水してこないのはなぜだろうかということである。



それが気になったので、おそるおそる部屋の窓に手をかけた。



すると、ぼくの部屋の窓はいつもと同じように拍子抜けしたような音を立てながらゆっくりと開いたのである。もちろん海水は浸水してこない。窓を開ける時には圧力さえ感じなかった。



「どうなっているんだ、これは……!」



ぼくは思わず驚嘆の声を漏らした。



これは可笑しすぎる。



なんでも、「おとぎ化」とはいえ、こんなことが現実に起こってしまうのである。思わず自分の目を疑いたくなった。こんなことは、もちろんはじめてだ。ぼくは驚きの色を隠せなかった。



しかし、そんな思いとは裏腹にぼくの右足は窓枠から踏み出して不思議な海の世界へと入っていった。さっきまでの臆病な自分が嘘のようだった。



この不思議な海の世界は普通の海の中と違って肺呼吸ができることだった。



これは確か……幼い頃に読んでもらったおとぎ話の本の世界にありがちなことであったが、頭の中で知っているのと実際に体験してみるのとではこんなにも違うのかと思った。



だが、やはり海の中なのだろう。