目が覚めるとどうやら、今までに見たことのないほどの高い天井が頭上にぶら下がっている。どこかの家の広間だろうか。いや、もしかするとさっきの旅館から出てなくてまだ布団の中にいたということか。
さっきまでのことは夢で、だとすると、あの旅館での亀吉とのやりとりも……だろうか。あのひげ面の大統領もそれから、旅館の近くの空き地で戦闘の訓練のようなことをしたのも……。
「お目覚めになられましたか?さっそく、何かお考えのご様子で」
布団に仰向けになりながらあれこれ情慮を廻らしていたぼくのそばにはいつの間にか端麗な顔立ちの侍らしき青年が立っていた。
年の頃はぼくとそう変わらないようだが、言葉遣いとつり合わないあどけなさの残るその声を聞くと自分よりも少し年下のような気がした。
まぁ、そんなことはあまり考えても詮ないので、ぼくのまわりの実状を探るべく、厚いかけ布団を剥いでその場に座り、そばに控えている青年侍に訊ねた。
「いったい、ここはどこで、ぼくはなぜここに寝ていたのだ。それから……」
と、突然青年の侍は遮った。
「ダメです。訊ねたいことがおありでしたら、一件ずつ丁重にお願いいたします。お便所の便器が詰まってしまいます」
「はぁ?」
「水圧が低いので、一気に訊ねられると便器の底が詰まって故障の原因になってしまいます」
またかと思いながらもぼくは理由を訊いた。
「どういうわけで……そんなことを……」
青年の侍は亀吉と同じような神妙な顔をつくって答えようとしたが、またしてもいやな予感がしたので堪らず、「わかった。やっぱ答えなくていい」と言った。
すると、今度は不思議そうな顔で青年の侍は答えた。
「では、お便所が水洗トイレであることをご存じで……わたくしが、水圧と申したからでありましょうか」
「やっぱり、そうくるんだよな」
「そういくでしょ!」
「タメ口か」
「もちろん」
さっきの腰の低さとは一転して、急に横柄な感じになる青年侍。
「ずいぶんといいご身分だな。たいして年も違わないくせに」
ぼくは相手が天人だなどという頭がなかった。
「たいしてなのかどうかはあくまでその人の主観によるのかもしれませんが……」
その言葉を聴いて
いやな予感がまたしてもよぎった。そう思うが早いか、青年侍は自分の年を言った。
「わたくしの年をあえて申すのでしたら、約千二百歳です。亀吉様の一億三千万歳にはかないませんがね。いひひ」
ぼくはもう驚かなかった。相手が天人であることを忘れていようがいまいが、驚かなかった。
実際、驚いたとしても、それは多少のすり傷になれた少年のようにさほどの驚きはなかったので、あってもなかったことにした。
むしろ、この手の話が多すぎてもう厭きてしまった。
さっきまでのことは夢で、だとすると、あの旅館での亀吉とのやりとりも……だろうか。あのひげ面の大統領もそれから、旅館の近くの空き地で戦闘の訓練のようなことをしたのも……。
「お目覚めになられましたか?さっそく、何かお考えのご様子で」
布団に仰向けになりながらあれこれ情慮を廻らしていたぼくのそばにはいつの間にか端麗な顔立ちの侍らしき青年が立っていた。
年の頃はぼくとそう変わらないようだが、言葉遣いとつり合わないあどけなさの残るその声を聞くと自分よりも少し年下のような気がした。
まぁ、そんなことはあまり考えても詮ないので、ぼくのまわりの実状を探るべく、厚いかけ布団を剥いでその場に座り、そばに控えている青年侍に訊ねた。
「いったい、ここはどこで、ぼくはなぜここに寝ていたのだ。それから……」
と、突然青年の侍は遮った。
「ダメです。訊ねたいことがおありでしたら、一件ずつ丁重にお願いいたします。お便所の便器が詰まってしまいます」
「はぁ?」
「水圧が低いので、一気に訊ねられると便器の底が詰まって故障の原因になってしまいます」
またかと思いながらもぼくは理由を訊いた。
「どういうわけで……そんなことを……」
青年の侍は亀吉と同じような神妙な顔をつくって答えようとしたが、またしてもいやな予感がしたので堪らず、「わかった。やっぱ答えなくていい」と言った。
すると、今度は不思議そうな顔で青年の侍は答えた。
「では、お便所が水洗トイレであることをご存じで……わたくしが、水圧と申したからでありましょうか」
「やっぱり、そうくるんだよな」
「そういくでしょ!」
「タメ口か」
「もちろん」
さっきの腰の低さとは一転して、急に横柄な感じになる青年侍。
「ずいぶんといいご身分だな。たいして年も違わないくせに」
ぼくは相手が天人だなどという頭がなかった。
「たいしてなのかどうかはあくまでその人の主観によるのかもしれませんが……」
その言葉を聴いて
いやな予感がまたしてもよぎった。そう思うが早いか、青年侍は自分の年を言った。
「わたくしの年をあえて申すのでしたら、約千二百歳です。亀吉様の一億三千万歳にはかないませんがね。いひひ」
ぼくはもう驚かなかった。相手が天人であることを忘れていようがいまいが、驚かなかった。
実際、驚いたとしても、それは多少のすり傷になれた少年のようにさほどの驚きはなかったので、あってもなかったことにした。
むしろ、この手の話が多すぎてもう厭きてしまった。


