梅林賀琉

「いえ。ただ、浦島様がうらやましいだけで御座います。これはただの洒落では御座いません」


「じゃあ、何なんだよ。早いとこ済ましてくれないか。いつもこう焦れったいんだ」



亀吉は少し残念そうな顔をする。



「左様ですか。では、申しますが、浦島様がこの脆そうで堅い梅の木でできた木刀をこのように綺麗にそれもまた同じ梅の木でできた木刀で寸断するのは並大抵の者にできる技ではないので御座います」



そう言いながら、亀吉はぼくに木刀の断面を見せる。なるほど、その切り口は刀で寸断したようになっている。自分で言うのもなんだが、これは神業だろう。



「いえ。めっそうも御座いません、亀吉様。これはきっと亀吉様によるお力の賜物で御座いましょう」


「はっはっは、畏れ入ったか、浦ちゃん。おいらの……」


「調子に乗るな。ぼくがちょっと畏まった言い方になったと思ったら、これだ」



ぼくも亀吉もどうかしている。ぼくは多様な人格が自分に乗り移っているかのごとく感じていた。ただぼくらはそのことには一向に触れないでまた話をもとに戻した。


「申しわけ御座いません。しかし、浦島様のお力はご健在のようであります。この分でありますと防御の訓練はいたさなくても差し支えないかと……」


「いや、やる」



ぼくはきっぱりと言った。



「では、秘伝の道具をお持ちいたしますので、しばらくの間お待ち下さい」



亀吉はそう言って、すたすたとどこかに消えた。



数分後に亀吉はまたやってきた。全く忙しいやつである。


右手には手のひらサイズのバズーカ砲であろうか。それを持ちながら、得意気な顔をしている。


ぼくはさっそく、亀吉に訊ねた。



「それは何だ?」


「梅干しバズーカに御座います」


「また、梅か。もう、あきたぞ」


「浦島様はあきっぽいので御座いましょう。それよりもここでは、これを使用できません。空き地に移動いたしましょう」



空き地と聞いたとたん、あのアニメに出てくる空き地を思い出したので亀吉に訊いてみると、そんなものだと言う。


どうして、おとぎ話の海亀が現実世界の人間がみているアニメのことを知っているのか不思議に思ったが、どうせまたあの「神通力」なるものが出てきて長い講釈をつけそうだから、早いところ亀吉の言っていることに対して首肯した。