梅林賀琉

亀吉は口をへの字に、眉間にはしわが寄り、神妙な顔で「いつでも、良きに御座ります」と言い、木刀を両手で横にして持ち、頭上に掲げた。



足は大きく開いた状態で構えている。



ぼくはそれに対して、すっと左足を前に出し、八相に構えた。



「やぁ!」という大きな掛け声とともにぼくは亀吉の持っている木刀目がけて自分の木刀をふり下ろした。


その刹那、時が止まったように見えたが、気づくと亀吉が持っていた木刀は見事に二つに割れている。



しかし、亀吉の兜には何の外傷も見られない。当の亀吉もなにやらあっけにとられているように思えた。



亀吉はそのあっけにとられた顔から一転して、相好を崩して言った。



「わたくしの腹筋のようでありますね」


「何を言うと思いきや、亀吉の腹筋のことか。誰も訊いちゃいないよ」



亀吉は今度は意外そうな顔をした。



「左様でありますか。それよりも太郎様、口調が戻られましたね」



亀吉に言われて気づいたが、ぼくの口調は普段の言い方に戻っていた。



「そんなことより、さっき脆くないとか言ってたこの木刀、見事に二つに折れてるじゃないか。これ、兜してなかったら怪我してたんじゃないのか?」



「わたくしのことを気づかって下さっているのですね。あたしうれしい!」


「でた。また、オカマかよ。しかも、主語の統一性がないし……」


「左様ですか。それは有難いことで御座います」


「別にほめてないし」


「グレナイで、太郎様」



亀吉はいつの間にかぼくのことを太郎様と呼んでいたが面倒なので、無視していた。



「これは太郎様のお力によるものです!」


「何が?何か話が飛んでるけど、二つに折れた木刀のことか……亀吉が腹筋なんちゃら、あたしがなんちゃら言ってるから何だか話がわかりづらくなるんだよな」


「申しわけござーせん」


「思ってないだろ。言い方適当だし」