梅林賀琉

西洋人のくせに浴衣が妙に似合う大統領はぼくに目を合わせると、顔にフィットした鼻眼鏡をくっと上げて笑みを浮かべた。



絵に描いたような好好爺である。大統領はその笑顔のまま、丁寧にお辞儀をした。



亀吉は横で冷や汗をかいて、気まずそうな顔をしている。ぼくに何かを言いたげでもあるが、口は固く結んだままだ。



おしゃべりの亀吉に似つかわしくない様子であった。



すると、大統領はぼくらに向かって流暢な日本語で話しかけてきた。



「はじめまして。亀吉さんと浦島太郎さんですね。わたしの名前はもうご存知かと思われる手前、あえて申し上げません。その代わり、出会って早々にお二人に質問をしたいのですがよろしいですか?」


「いやです!」そう言ったのは亀吉である。「わたくしはメリケンが大嫌いであります」


「いつの時代だよ」



つい、この世界が現実の世界であると肯定していると取れるような発言をぼくはしてしまった。



しかし、亀吉はそれには構わなかった。


「浦島様、メリケンなんかと話してはなりませぬ。ラジオが壊れるどころか、空母を沈められる危険も孕んでいるのであります!!」


「幕末かと思ったら戦中かよ。というか、さっき他人に話しかけてはならないようなこと言ってたよな」


「話しかけられた場合とは異なります」


「どう違うのだ?」


「他人からわたくしたちに向かって最初に話しかけられた場合にはラジオは壊れませぬ」


「空母が沈められるんだろ?」



ぼくはさっき亀吉が真顔で言った文句を冗談で繰り返した。



「いえ、もうすでにラジオは壊れかけていることでしょう。ほっほっほ」今度はルーズベルト大統領がぼくらの言い分を否定するように主張するのであった。「実はわたしの前にお二人がおられるだけでラジオは故障するのです。どちらが話しかける、話しかけられるかは問題ではないのですよ。ほっほっほ……」


「忌々しい!このひげ面メガネじじいが!!」



亀吉は激情した。一体何を持ってここまで大統領に感情的になっているのか、ぼくには理解できなかった。



ぼくには亀吉がただの西洋人嫌いにしか見えなかった。人間の姿になっているとはいえ、実質上海亀の西洋人嫌いとは妙なものである。そもそも海亀に西洋人、東洋人の違いもあったものじゃないだろう。



亀吉が息巻く中をさらにルーズベルト大統領は続ける。