梅林賀琉

このぼくの想いは乙姫様にバレてはいないだろう。乙姫様は穏やかな顔でぼくに言った。



「どうでしょうか。今から浦島様の記憶を取り戻すべくこの世界を案内いたします。亀吉とわたくしと浦島様の三人で巡りましょう」



ぼくはただ、はいと首肯した。



すると、乙姫様の口からまたしても驚くべきことを耳にした。



「わたくしの方から申しておいて大変失礼なのですが、今日は宵のエクスプレスが運行しておりませんので竜宮城を案内することができません。それゆえ、今宵は近くの桃ノ宮旅館でおくつろぎ下さいませ」



竜宮城はそんなに広いのですかと問うと、見た目は普通の城だという。



だが、中は圧縮空間になっていて東京ドームの数億個分はあるらしい。



全く亀吉や乙姫様の年齢に始まり、竜宮城までが億単位とはなんでも規模が大きすぎると思うのであった。



結局、その夜は桃ノ宮旅館に泊まることになった。



しかし、部屋は「竜宮城下町旅館規定其の五」により乙姫様と亀吉、ぼくに分かれることになると乙姫様から告げられた。



何も、そんな規定に則らなくとも当然必然の成り行きでそうなるだろうとぼくは思っていた。



旅館の入り口には、「衣食住・桃ノ宮旅館」という立て看板があった。



「衣食住」