梅林賀琉

「うーん……整数論とガウスは切っても切れない関係だっていうのは知っているけど、それが整った容姿の天人とどう関係があるのかを明確にしてくれないことにはなぁ……いや、でもまた面倒な話が続くといやだしなぁ……えぇい、ままよ……煮るなり焼くなり勝手にしてくれ!」


亀吉はわかっているくせして、「つまりは?」とにじり寄る。


「まだ言わせるのか?」


「はい!」


「なんだ、その嬉しそうな顔は。もうわかっているんだろ」


「はい!」


「じゃあ、言わせんなよ」


「鰯の頭も信心からで御座いますね」


「意味がわからん……行くって言えばいいんだろ。言葉が足りなくて悪かったな」


「いえ、めっそうも御座いません」


「へっ、どうせそんなこと思ってないくせに……」


「何か申されましたか?」


「えっ、いや。ううん、何でもないよ」


「左様でしたら、さっそくわたくしの背中にお乗り下さいませ。本日はサービスで搭乗料は無料でございます……あっ、本当は無量百千万なんですよ……てへっ、なんちゃって……あっ、それと暇でしたら、音楽もかけられるんでげすよ……げへへ、わたくしの鼻唄ですがね……」



亀吉はこんなふうに面倒くさいこと極まりなかったが、とりあえずぼくは乙姫様とやらに一度会ってみたいという思いがあったので渋々承諾した。



そして、ぼくは亀吉の背中に乗って竜宮城に行くことになった。



ぼくは亀吉の背中に乗りながら、さっきのぼくの居場所を突き止めたやつとは亀吉のことではあるまいかと思ったので、問うてみた。



すると、「えぇ、左様で御座います」と何でもないことのようにさらりと答えた。「ただし、わたくしだけではありません。神通力を使える者には誰にでもある程度は目的の人の居場所がわかるのです」



また、神通力かと思ったがそこにはあえて触れないでおいた。



「でも、なぜさっきは自分がぼくの居場所を突き止めたと言わずに、そういう者がいるようなことを遠回しに言ったのだ」


「それは、恥ずかしいからに御座います」


「なぜ?」


「他の者は、一応そのような能力を使えるのですが、それほど精度が高くなくて、ときに間違えることがあるのです。


ただし、それは竜宮城内においてであって世界中探せばきっとわたくしと同じくらい、いやそれ以上の神通力を持つ、いにしえの目連尊者のような方がいるかもしれません」


「なるほど、それで亀吉が選ばれし強者というわけか」


「恐れながら、左様に御座います」



その時、亀吉の頭を見ると仄かに赤くなっているのであった。



「亀というのはこういう時に、頬ではなく頭が赤くなるのか」


「……はい」