梅林賀琉

しかし、ここで拒み続けても埒が明かないと思い、疑念をいだきながらも潔く自分が浦島太郎ということをぼくは認めてしまうのである。


「わかった。亀吉だっけ、君とここでずっと話していると疲れるからぼくは浦島太郎であることを容認しよう。それで、あれは何だ。用件ってやつか。そのためにぼくのところに来たんだろう」



ぼくは三分の一ほど開きなおって言ったつもりだった。しかし、そこは亀吉という海亀の性格なのか。一億三千万歳とは思えぬ童子のような笑顔になって喜んだ。



「いやぁ、こう早くお話が進むとは思いませんでした。さすが、浦島様に御座います。それで、大事な用件に御座いますがこれは乙姫様の言伝てすなわち、砂鉢宗助……」


「つまらない冗談はいいから話を早く進めてもらえないか」


「失礼いたしました。すなわち、乙姫様から頼まれたことなのであります。その内容とは、実に乙姫様と浦島様が別れてから一千年余り、つまり人の世でいう日本の平安時代以来会っていないということに相成ります。


これは普通の人間でしたら、新たに何回か生まれ変わっていてもおかしくないわけであります。ですから、音信不通等の問題でないことは言うまでもありません。しかし、ここからが信じ難いことであります。