「……左様ですか。浦島様がそうお考えになるのであれば仕方ありません」
「それから、言っておくがそもそもぼくは浦島太郎ではないし、さっきのシャバ世界とかジンヅウリキとやらの意味がさっぱりわからない」
「そうでありますか。確かにいきなり過去世のご自分のことを言われてもピンとこないのは仕方ないでしょう。でも、わたくしは浦島様がこの話に納得していただくまで待ちます。何百年でも何千年でも待ちます」
(おいおい、それは何でも待ち過ぎだ。数十年ならまだしも何百、何千は言い過ぎだろう。少しは、人間の寿命というものを考えて欲しいものだ。全くこのお化け海亀は……)とこんな感じでぼくはどうも亀吉の口吻に辟易してしまうのだった。
しかし、そんなぼくの心中を知ってか知らずか、亀吉はさっきの質問に対して表情一つ変えず、淡々と述べるのであった。
「それから、さっき浦島様が裟婆世界と神通力について問われたことでありますが、まず、裟婆世界とは簡単に申しますと人間などの住む、欲や苦しみの世界という仏教用語であります。
また、神通力―これも、同じく仏教用語に御座いましていろいろな使われ方をしますが、わたくしどもはこの世界を自由にかつ光ファイバーのような速さで移動できる力という意味で使っております」
この時のぼくは仏教用語というとどうも難しい僧侶の顔を思い浮かべてしまい、何だか近づき難いイメージがあった。
「それから、言っておくがそもそもぼくは浦島太郎ではないし、さっきのシャバ世界とかジンヅウリキとやらの意味がさっぱりわからない」
「そうでありますか。確かにいきなり過去世のご自分のことを言われてもピンとこないのは仕方ないでしょう。でも、わたくしは浦島様がこの話に納得していただくまで待ちます。何百年でも何千年でも待ちます」
(おいおい、それは何でも待ち過ぎだ。数十年ならまだしも何百、何千は言い過ぎだろう。少しは、人間の寿命というものを考えて欲しいものだ。全くこのお化け海亀は……)とこんな感じでぼくはどうも亀吉の口吻に辟易してしまうのだった。
しかし、そんなぼくの心中を知ってか知らずか、亀吉はさっきの質問に対して表情一つ変えず、淡々と述べるのであった。
「それから、さっき浦島様が裟婆世界と神通力について問われたことでありますが、まず、裟婆世界とは簡単に申しますと人間などの住む、欲や苦しみの世界という仏教用語であります。
また、神通力―これも、同じく仏教用語に御座いましていろいろな使われ方をしますが、わたくしどもはこの世界を自由にかつ光ファイバーのような速さで移動できる力という意味で使っております」
この時のぼくは仏教用語というとどうも難しい僧侶の顔を思い浮かべてしまい、何だか近づき難いイメージがあった。


