梅林賀琉

「実は、わたくしおよそ一億三千万年前から亀吉という名に御座います。正確に言っても覚えていただけないと思いますゆえ、年齢は省略して、一億三千万歳とさせていただきます。


伝説上でも亀は万年と動物の中でも長寿ですが、わけあってわたくしは海亀の中でも最長寿で一億年以上この裟婆世界に生きております。


乙姫様の五百億歳には敵いませんがね」



ぼくは乙姫様のところにきて、(宇宙よりも寿命の長い女がどこにいるんだよ。


いくらおとぎ話の世界でもそんなの聞いたことないし。


しかもシャバ世界ってなんだよ。亀吉は何か悪いことしてやっとシャバに戻って来れたってことか)と文句を垂れた。



この時のぼくは仏教用語に疎かったのでそんなことを考えていたのである。



「それはずいぶんと長いもんだ。それもそうだが、さっきの正解の内容について教えて欲しいのだが」


「内容はないよ~う」


「はぁ?」


「失礼いたしました。冗談に御座います。本来、わたくしは今日の宵の口に参上するつもりでしたが、浦島様がだいぶ積極的になられたご様子だったのでただ今、神通力で罷り越しました次第に御座います」



ここで、またさっきのように全部飲み込んでしまっては何かヤバそうな気がしたので、きっぱりと言い返した。



「いや、ぼくは積極的になったつもりはない」


「でも、海の中を楽しそうに散歩されていたでは御座いませんか」


「それは誰だって見たことのない光景を目にしたら、そうならざるを得ないではないか」