梅林賀琉

と言った。



「降参するには早過ぎに御座います。浦島様らしからぬ言動に御座いますゆえ、今一度お考え下さいませ」



海亀ごときに何がわかるのだとも思ったが、この問答が面白くなくもなかった。だから、ぼくは海亀の酸っぱそうに窄めた口を見てこう返した。



「口がどうかしたか」


「そうです、口です。それともう一つ、梅干しの酸っぱさは食べた時にいづくにくるで御座いましょう」


「当然、口にくるはずじゃなかったか」



すると、さっきまでの干からびたスルメイカのような顔から打ち上げられたばかりの真イカのような顔になった。



そのいきいきとした顔で海亀はこう言った。



「正解、大正解に御座います!」



学校のテストで百点を取ったことのないぼくはちょっと嬉しくなった。



しかし、ちょっと馬鹿にされた気分が後から追ってきてテンションが下がったのでじゃあ、また宵の口に出直して来てくれとでも言おうと思ったが、またあの萎びた顔を見るのがいやになったので黙っていた。



すると、どういうわけか申し訳なさそうに海亀は続けた。



「ちなみに、わたくしには名前が御座いまして、亀吉と申します」



ペットに名前がついているくらいだからまぁ驚くことでもなんでもないと思ったが、亀吉とはずいぶんありきたりな名前だな。どこかの家のミドリガメのペットの名前のようだ。



しかし、次の亀吉の発言でぼくは気が遠くなるような思いをさせられるのである。