「…っ、いねえよ。」 「あら、そう。 なら、那菜はいる?」 「お母さんっ!?」 那菜は部屋を出たところで。 気付いた。 気付いてしまった。 「那菜、迎えに来たわよ。」 「え?」 「嘘吐くんじゃねえよっ! また、捨てる気なんだろ!?」 優しそうな微笑みは、 今では嘘だと物語る悪魔の顔にしか 見えなくなっていた。