「何?」
夏希がきょとんとして聞き返す。
俺は眉間に手を添えたまま続けた。
「夏希、その…
好きな人となんかあった?」
これしか、
分からなかったけど。
でも、いつもより
潤んでいるその瞳とか、
いつもなら絡んでくる所で
何もしてこないとか、
いつもよりも笑顔が無いトコとか、
いつもより俯きがちなトコとか。
今考えてみれば無理矢理引っぺがした時
いつもの夏希なら
きっと無理にでも追いかけてきただろう。
あんなにのろのろ動いてたんだ。
いくら足の遅い人でも追いつくだろう。
それなのに来なかった。
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