私は冬真くんと手を離し、先輩の元へ駆け寄る。
「…ほんとっ、最悪。涙なんて見せたくなかったのに…なんで…なんで止まらないんだよぅっ…」
先輩は涙を流しながら言う。
「…。」
きっと河西先輩を
今まで支えてくれたのは…
河西先輩のお母さんだろうな…
だって…最初は1人、1人って言ってたんだけど…
河西先輩が『お母さん』と、言うたび
なぜか大切な人かのように
目を細めるんだもの……。
でも…きっとお母さん以外に…
「…これから…きっと、先輩を支えてくれる人…現れますよ。」
見つかるよね…
私がそう言う。
河西先輩は…
「そうかもね…。…まぁ…一応ありがとう……じゃ…いくわね。
私…幸せになれるかわからないけど…
幸せになりたいと思ってる…」
そこまで、言って止まる…
「幸せっていいね…」
先輩は最後いい笑顔をして
それから立ちあがり行ってしまった…
幸せ…分かってもらえてよかったぁ…
「ずいぶん、かっこいい事、言ってやがるな。」
私の頭上からそう聞こえた。
私はまだしゃがみこんでいたから
「そうかなー?」なんて言いながら立ち上がろうとした…
が…
ギュッと…後ろから
冬真くんに抱きしめられる。
「…心配したんだぞ……」
顔は見えないが冬真くんの言葉は震えていた…
いや…全身震えてるんだ…
私の体にまで伝わってくるんだもの…
…
「…ごめん…ごめんなさい…」
私は謝る。
最近、謝ってばっかりな気がする。
「…。」
冬真くんはこれ以上何も言わない。
ただ、抱きしめる力が増すだけだった。


