私はしばらく引っ張られる。
男の人の力には勝てないという事は
充分、分かっていたので
せめて、なぜ来たのかだけ
聞く事に…
「ねぇ…?なんで来たの?」
私は陽暮くんの背中を見つめながら言う。
「…。」
喋る事も止まる事もなく、黙って歩き続ける陽暮くん。
「ねぇ……?」
私は話しかけるが、ずっと黙ったままだった。
…聞こえてるくせに……
しばらく引っ張られると…
陽暮くんは止まる。
私も止まる。
ついた場所は……
中庭。
中庭には誰もいなかった。
「守りたかったから。」
急に陽暮くんがそう呟き
私と繋いだ手にきゅっ…と力をいれた。
守りたかったから…?
私…を?
「俺にも守る人ができたんすよ…」
そして私の方を向く。
「守る人……?」
私は聞き返す。
陽暮くんはニコッと笑い
「そ。守る人っす。」
と、私の目をみながら言う。
そしていきなり私の視界は真っ暗に。
それは…
陽暮くんが私を抱きしめているから……
「ひ、ひぐ、れくん?!」
「先輩…守らないといけない人…それは……」
私の心臓は早く動く。
ドクン…ドクン…と……
「舞先輩っすよ…」
あぁ…最初から抵抗していれば
こんな事聞かずにすんだ…
こういう時はどうすればいいの…
相変わらず陽暮くんは
私を抱きしめたまま。
「陽暮くん…」
私は顔をあげる。
陽暮くんの顔は真剣そのもので…
私は何も言えない…


