私はそこまで聞くと感づいてしまう。


「結婚しなかったのって…私のせい?」


「そうよ。まぁ、あなたのお母さんね。あの人は『他に好きな人ができた。』って言って、でていって…

その田雨さん?と結婚して…
それからあなたが生まれた。」




私は何も言えなく黙って聞く事しかできない。





「あたしはあの人が本当の父親じゃなくて良かった。

でもお母さんと私は苦労した。
私はいつも1人で何もかもやってきた。

1人でね…」




その"1人"というワードがどうしても

私は気になってしまう。




でも先輩はそんな事気にせず
言葉を続ける。



「その後、あの人が離婚したってきいて
綾瀬さんにざまぁ…だって思った。私と同じ苦しみを味わえば…」


そこで一回、息を吸い…




「だけど…あなたは他に家族ができた。

あなたは1人じゃ何もできないの?

そう思った。」



真剣な瞳で見つめられる。




できない…多分…


私は1人では何もできない。





私はただただ、俯く事しかできなかった。










ーーー…ガチャ



…?!





誰……











そこには…息切れしている…

「ま、い…せんっぱい。」







陽暮くん……





私は助けなんて呼んでないのに…












でも、すごく汗かいてるし

多分私を探していたのだろう。




「舞先輩、返してもらいますよ。」

強引に私の手を掴み、早歩きをする。






「ちょ…「綾瀬さん、また今度。」







河西先輩は止める事なく


私を見つめているだけだった。